震災障害者について

阪神大震災では1万683人が重傷(1ヶ月以上入院)を負いました。でも、行政は震災が原因で障害者となった人数を、長い間把握しようとしませんでした。
行政は「既存の福祉施策で対応する。震災障害者と他の障害者の区別はしない」との論理を14年間押し通してきました。
しかし、震災障害者の抱える事情は、家族や住まい、住み慣れた地域、仕事を失った上に、心身に重い障害を負うという複合的な被害を「同時」に受けるという特殊なものなのです。



見捨てられた存在

 Aさん一家の自宅は全焼、子ども3人のうち2人が亡くなり、母が重いクラッシュ症候群となり父は仕事を失いました。Bさん一家の自宅は全壊、子ども2人のうち1人が亡くなり、母は片足切断となりました。
震災は一家に死亡・重傷・障害・失業など様々な運命をかぶせました。
また、震災当時は被災地の病院が機能せず、治療が遅れ重症になったケースも多くあります。更に被災地外の病院で長期入院を余儀なくされたため、住み慣れた町に帰って来た時は「復興」の二文字が溢れ、障害を抱えた自らとの落差に打ちのめされ喪失感を味わう人がどれほど多くいたことでしょう。

病院イメージ写真

震災障害者に対する国の支援は、災害障害見舞金だけです。
でもこれは障害等級一級(両眼失明・両上肢肘関節以上失う・両下肢膝関節以上失うなど)に該当する人だけであり片足・片腕を切断した人への支援はありませんでした。
また、行政には震災でケガをした人のための相談窓口はなく、震災障害者とその家族は途方に暮れるばかりでした。多くの死者の陰にかくれ「生きているだけまし」と言われ、思われ「辛い」と声を上げることもできず、孤立していったのです。

ある震災障害者の家族はいいます、「命の次に大切なのは体です。それなのに震災で障害を負った人を誰も見ようともしません。」復興が進んだと聞くたびに、違和感を感じていました。

当事者と家族が集える場所

震災から12年が経過したある日、「今も重い荷物を背負っています。同じ悩みを持つ人が集まり、薄紙を剥ぐように軽くしていきたい」とCさんに言われ、2007年3月から毎月1度「震災障害者と家族の集い」を「よろず相談室」で開いています。もう40回以上「集いの場」が持たれました。
それぞれが生きていく上で抱える問題は違っています。でも、行政からの支援は一切なく「孤立無援」であったことは共通です。当初、皆の表情は固かったが会を重ねるごとに、表情は本当に柔らかくなりました。お茶を飲んでワイワイ話すだけで、心が軽くなっていくといいます。同じ悩みを持つ人同士だからか、不思議な力だと参加者は一様に語っています。

震災障害者と家族のつどい

また、震災障害者たちは自分たちの経験を教訓として活かしたいと考えています。
そのため、よろず相談室では当事者と共に次の災害に備えるための制度の見直しなどを提案しています。具体的には・・・


  • 震災でけがをした人のための行政窓口をつくる
  • 震災障害者の実態を把握して、次の災害の医療制度を見直す。
  • 災害障害見舞金を広く段階的に拡充する。
  • 防災学習の拠点である「人と防災未来センター」に震災障害者の教訓を記録として残す。

・・・といったものです。
これらは、国や行政はあなたを見捨てていませんよ、とのメッセージであり、
何より当事者・家族に安心感を与えるものなのです。

ようやくはじまった実態調査

震災から15年がたち、兵庫県・神戸市はようやく実態調査に乗り出しました。調査によると、震災で「身体障害者」となった人たちは「少なくとも328人(うち121人は死亡)」しかし、この調査は「身体障害者手帳を持っている人で、診断書の原因欄に『震災』『1・17』と医師が明確に記載している人のみ」という幅の狭い調査でした。「よろず相談室」では、現在13名の人と拘わっていますが、その中に5名が328名に含まれていません。5名の中には、子どもを亡くし自ら片足切断した人や、復興住宅に入居し一種一級の身体障害を持つ人がいます。
また、知的障害・精神障害となった人たちもこの中に含まれていません。


神戸市が実施した障害者への生活実態調査によると、市内9万名の障害者手帳保持者の内、約3%が震災が原因で障害を持ったと答えています。また、震災時、重傷を負った人が1万人以上であることを重ね合わせると、震災障害者は2千5百名以上いると言っても過言ではありません。この人たちをどのように把握していくのかは、今後の重要な課題となっています。

当事者や家族が、当時、何を必要としたのか、今どのような支援が必要なのか、そして今後起こりえる大災害に向けどのような『教訓』を発信できるかは、阪神淡路大震災での当事者・支援者と被災地行政の役割であります。

 

 先日発表された兵庫県・神戸市による実態調査の中間発表の中で、「悩みを相談できる人が家族75%」「相談できる人はいない10%」であったことは、自らの悩みや苦しみを16年間他者に語ることが出来なかったことを示す数字だと思います。

 天災という不慮の事故で中途障害となった震災障害者。彼らは自らの努力で生き紡いできました。 震災障害者の「集い」も2011年3月で5年目を迎えました。この間に出会った震災障害者や家族の問題は複雑で多様でした。ですが、そこに共通していることは、『前向きに生きたい』ということです。

よろず相談室はこれからも、当事者と彼らを支えている家族の事を通し、震災障害者の問題を考えていきます。

神戸市長への手紙  当事者と家族の声  

2010年1月17日、震災障害者と支援者は、はじめて神戸市長に会いました。
この時、当事者・支援者からの要望書と3名の当事者・家族が手紙を渡しました。
その手紙の全文を掲載します。



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