「震災障害者と家族の集い」は、スタートから8年目に入っています。いまも月1回のペースで集まり、どうすれば震災障害者とその家族が前向きに生きていけるかを話し合っています。当事者の視点から、震災障害者とその家族が当時何を必要としたかを検証するとともに、いま何が必要かという課題の解決に取り組んでいます。
そしてこの教訓を、東日本大震災や今後の自然災害の障害者のために伝えることが、阪神淡路大震災を経験した私たちの役割であると考えています。
1.震災障害者の声~神戸市長への手紙
2010年1月17日、「震災障害者と家族の集い」は神戸市長に面会し、震災障害者への支援を求め、それぞれが書いた手紙を渡しました。その手紙には、長いあいだ訴えられなかった思いが綴られています。
生後2か月の娘がタンスの下敷きになって重い障害を負った両親の手紙
幅60cmの空間に18時間閉じ込められて急性心不全・腎不全になり、クラッシュ症候群の後遺症に苦しむ男性の手紙
中学3年の娘がピアノの下敷きになって高次脳機能障害になった母親の手紙
2.震災障害者の実数の把握~診断書の原因欄に「自然災害」を
いったいどれだけの人が苦しんできたか、そして今も苦しんでいるか。その救済のためには、実数の把握が欠かせません。
震災から15年後、兵庫県と神戸市は数の調査に乗り出し、震災によって「身体障害者」となった人が少なくとも328人(うち121人は死亡)であると公表しました。しかし、この調査は、身体障害者手帳の交付を受けている人のうち、診断書の原因欄に震災等と明記されている場合だけを抽出したもので、震災障害者の数は、これより遥かに多いと考えられます。実際、よろず相談室が関わる震災障害者のうち5名は、公表された人数に含まれていません。また、知的障害や精神障害の人を含めていない点でも疑問です。
この点、神戸市が実施した障害者の生活実態調査によると、市内9万人の障害者手帳保持者のうち約3%が震災起因で障害を負ったと答えており、単純計算すると2700人になります。阪神淡路大震災の重傷者(1ヶ月以上入院した人)は1万683人ですが、その4分の1程度(少なくとも2000名以上)に障害が残ったと考えても不思議ではありません。
その後、兵庫県と神戸市は、障害者手帳の申請に必要な医師の診断書を通じて震災障害者を把握できるよう、診断書の原因欄に「震災」「自然災害」という項目を追加しました。震災障害者の集いでは、この原因欄の記載を改める動きが全国に広がるよう、関係機関に働きかけています。
3.震災障害者の現状~相談窓口の設置を
2011年1月に兵庫県と神戸市が行った震災障害者へのアンケートによると、60歳以上の人が73.8%、独居者が22.4%、年収200万円未満が27.9%、同居家族の死亡6%、家族以外に相談相手がいない人84.3%(誰も相談相手がいない人9.2%)でした。注目すべきは、本人とその家族が他に相談できる場所がないという点です。
「震災障害者と家族の集い」は、震災障害者の特異性を理解したうえで今後の生活を一緒に考えてくれる相談窓口を設けてもらうよう、行政に求めています。
→兵庫県が2013年4月に設置した相談窓口はこちら
4.教訓を伝える~他の地域への働きかけ
東日本大震災の被災地においても震災障害者の調査は進んでおらず、震災障害者に着目した支援はなされていません。阪神淡路大震災と同じことが繰り返されています。
「震災障害者と家族の集い」は、東北各県を訪れ、関係機関に対して実態の把握と相談窓口の設置を訴えるほか、現地のボランティア組織と交流し、震災障害者の支援の輪を広げるよう取組みを続けています。
震災によって障害を負った全国の方々へ→こちら