◇借り上げ住宅の20年問題
阪神地域の復興住宅には、県や市が所有する建物以外に、都市再生機構(UR)や民間事業者が所有するマンションを県や市が借り上げるかたちで供給されているものがあります。阪神淡路大震災の当時、仮設住宅の解消に躍起になった行政が、住宅建設の用地や予算確保の見通しがたたないなか、全国で初めて導入したものです。
実は、この「借り上げ方式」には賃貸期間20年の期限(2015~23年の間に順次到来)が定められており、その期限が近づくや、県や市は入居者に対して退去を迫り、別の公営住宅への転居をあっせんしているのです。これには、借り上げにかかる経費の負担を軽減したい行政の思惑があるといわれています。
しかし、20年の歳を重ねた高齢者に対して今になって転居を強いることは、あまりにも非情ではないでしょうか。このような手荒な施策が当事者の孤独を深め、自殺や孤独死に拍車をかけることは、過去の経験から容易に想像できます。批判を受けた県と市は、一定の基準(期限満了時に85歳以上、要介護3以上の高齢者、重度の障害者のいずれかを満たす場合)で入居継続を認める方針を打ち出しましたが、基準を満たさなくても転居に耐えられない状況の人は多いのです。
そもそも、入居者は、望んで期限付きの住宅を選んだわけではなく、限られた選択肢から行政に促されて申し込んだ住宅がたまたま借り上げ方式だったにすぎないのです。また、当時の行政は入居者に対して20年後の退去をきちんと説明しておらず、まったく聞いていないという人も多いようです。
よろず相談室では、復興住宅の単身高齢者がいまも互いに助け合って暮らしていることに目を向けてもらえるよう、入居者の声を行政に届けていきます。
◇高齢者住宅への学生入居
高齢化に悩む復興住宅の対策として、神戸市西部の「明舞団地」の取り組みが解決の糸口になるのではないかと、検討を進めています。
高度成長期に作られたニュータウンは半世紀を過ぎ、高齢化問題を抱えています。そこで兵庫県は若い世代の入居施策を進め、数年前から県内の学生が同団地に入居しています。学生たちは、照明器具の交換など高齢者には難しいことを代行するほか、自治会活動にも参加することで、同団地の活性化に役立っているというのです。
同じく深刻な高齢化に陥る復興住宅にこの制度を取り入れることで、高齢者の暮らしによい効果をもたらすと考えています。若い学生が住戸の見回り活動などに参加し、何よりも「ずっと近くに住んでくれる」ことが、高齢者ばかりの住宅に安心をもたらすと期待しています。
現在、HATT神戸の住民自治会が、学生入居の実現に向け、行政への働きかけを進めており、よろず相談室もこれに協力しています。
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