よろず相談室は、阪神淡路大震災の直後から、神戸市東灘区を拠点に、震災復興住宅を訪問し、独り暮らしの高齢者の話し相手になる活動を続けています。
訪問先では、世間ばなしや日々の出来事など、相手と同じ目線で話し、健康不安や生活上の悩みを聴きます。訪問を重ね、継続することで、少しずつ信頼関係を築いてきました。
震災から約20年が経過したいま、復興住宅はさらに高齢化が進み、孤独死や自殺が起きるなど、前向きに生きることが困難な状況にあります。あの震災を生き延び、助け合って生きてきた人々が次々と仲間を失っていく、しかしそれでも、独りではないと伝え続けます。
◇ 震災復興住宅の現状とその背景
1.転居する度にコミュニティーが分断
阪神淡路大震災の当時、仮設住宅や復興住宅への入居は、社会的弱者(60歳以上の高齢者だけの世帯、障害者のいる世帯、母子家庭、65歳以上の高齢者のいる世帯など)を優先する方針で進められました。しかし、その際に、被災者が暮らしてきた地域の繋がりが考慮されることはありませんでした。
そのため、被災者は、避難所から仮設住宅、復興住宅へと転居を繰り返すたびに近所付合いを断たれたばかりでなく、やっとの思いで入居した復興住宅は単身高齢者世帯ばかりで、あらたな関係を築くことが難しい孤独な環境に置かれてしまったのです。周りの復旧・復興から取り残されたと感じた人も多く、孤独死・自殺が相次ぎました。
2.HAT神戸の現状
神戸の東部新都心「HAT神戸」には、東西2キロにわたって30棟3500戸の復興住宅があり、約7千人が暮らします。平坦な土地に高層住宅が整然と立ち並び、公園で子供たちが遊ぶ姿もあり、一見落ち着いた暮らしやすい地域のようですが、復興住宅の棟に足を運ぶと、ずいぶん印象が変わります。
震災から約20年が経過したいま、高齢化、孤独死・自殺といった復興住宅の状況はさらに深刻化しています。報道機関の数年前の調査によると、HAT神戸の震災高齢者で、病院通いの人が8割、友達がいないと答えた人が4割、外出の頻度が3日に1回以下の人が3割でした。周りが次々と亡くなっていくなかで、「明日どうなってもいい」「生きるのが辛い」「もう死にたい」という声をきくことが少なくありません。
復興住宅における課題と取組み(20年問題/訪問活動)はこちら